文化遺産マネジメントラボ

Cultural Heritage Management Laboratory

実践例③

PRACTICE3

情報発信施設の整備 ✖運営組織構築で

国内外からの集客に成功

 代表 米本 潔

株式会社コア 
代表取締役 濵田 泰 さん

米本:平成27年に島根県津和野町が日本遺産の認定を受け、国内初の日本遺産センターを開設するにあたり、株式会社コア様には大変お世話になりました。センターのコンセプトとしては、認定のもとになった歴史資料「津和野百景図」をもとに、津和野の魅力ある歴史文化を発信するため、限られたスペースの中で、ストーリーの面白さをいかに表現し、そして人によって語り伝えていくか、というものでした。
濵田:当社のこれまでの広告やイベント、プロモーションなどの実績が、全国で初めての日本遺産の事業展開に必ずお役にたてると思いプレゼンに参加させていただきました。幸いに採択をいただき、開館まで短時間ではありましたが、米本さんのビジョンを形にすべく全力で支援させていただきました。
米本:開館してみて分かったことですが、お客様は歴史好きな人だけではありません。家族連れや若いカップルなどもいますので、最初のコンタクトでいかに重要かということです。だいたい15秒くらいが勝負です。それ以上だと退屈になって関心を持ってもらえません。
濵田:お客様の心を一瞬にして掴むためには、江戸時代の津和野藩内の100枚の絵をパネルにして全てを一度に見せることがまず重要でした。そこにガイドの方による導入、そして3分間の紹介映像で完全にお客様を百景図の虜にすることができます。これは運営側と製作側の思いが一致した成功例だと思います。
米本:そこで心を掴むことができると、次の四季、自然、歴史・文化、食を紹介するコーナーへ、そして、城下絵図をみて、さあ今からどこへ出かけようか、ということになります。

濵田:100枚の絵をさらに四季や自然、歴史文化・食というテーマに分類分けし、現在と比較したパネル紹介は非常に興味深く、お客様も関心を持って読んでくれます。最後に今とあまり変わらない城下絵図をもってきくるようにしたのは、お客さんの心をうまく掴む仕掛けだと思います。
米本:各構成文化財を回るアプリを開発し、回遊性を高めるためにおよそ20個所くらいにサイン等も整備しました。津和野城跡には結果として、認定前の5年間と認定後の5年間を平均すると1.5倍に利用者が増えたというデータがあります。
濵田:アプリの制作も本社の得意とするところです。紙媒体も製作しましたが、目的地までのルートを表示するとか、近くにある他の絵も同時に表示するなどアプリでしかできない機能を入れることで差別化を図っています。利用者数の増加は、アプリとサイン、そしてガイドによる説明がうまく機能した結果だと思います。
米本:先にまちを巡ってきて、最後にセンターに寄ってくださったお客様から「最初にここにくれば良かった」という声をよく聞きました。また旅館の方が宿泊した方へ「まずセンターに行った方がいいよ」というふうに紹介してくれるようになったといいます。
濵田:単にモノを紹介するだけでなく、明確なコンセプトに基づく事業プラン、情報発信手法、展示、映像、イベント、そしてアプリ、サイン等が相互に関連しあってこそ、魅力が子どもからお年寄りまで多くの人に伝わるのだろうと思います。
米本:結果として、文化庁は情報発信施設の成功事例として事例紹介のトップに紹介してくれました。
濵田:日本遺産センターは、どこにもない文化財の魅力を分かりやすく紹介してくれる施設です。観光形態が団体客から個人客へ移り変わって行くなかで、単に展示するだけの施設は淘汰され、こうした個々のニーズに対応できる施設が残っていくのだろうと思います。ぜひこうしたノウハウを広めていっていただければと思います。そのためにも当社としても協力させていただきたいと思っています。
米本:これからもよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

これまで文化遺産を生かしたまちづくりを実践するにあたり参考になる書籍をご紹介します。(報告書等は除く)

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