文化遺産マネジメントラボ

Cultural Heritage Management Laboratory

実践例②

PRACTICE2

重要伝統的建造物群保存地区✖ まちなみ保存会で
空き家活用と自主防災への 取り組み実践

代表 米本 潔

津和野まちなみ保存会 
会長 財間 至宏 さん

米本:資料を調べてみると、実は30年くらい前に選定の話があったようで、当時担当者が研修会に参加していたんですね。調査報告書も取り組んだようなんですが、結局はまとめられずに、選定されないままになっていました。
財間:かつて津和野も観光で賑わい、支援がなくても自分たちでやっていける時代がありました。そうした中でも町並み景観は重要だという意識は共通意識としてあったように思います。
米本:歴史文化基本構想の策定時に奈良文化財研究所の担当者と話をしていて、これからやらない?ということになって話が急展開したわけです。調査開始から1年という超短期間で選定されました。
財間:次第に観光客も減り、住民の意識も代わってきました。なかなか個人では維持できない時代になってきましたので、このタイミングで選定されたのは大変ありがたいと思っています。それまでは他人事でしたが、お互いに景観について話をしやすい雰囲気になりました。
米本:選定後、主要な方々に集まっていただき保存会設立について話をさせていただきました。その後サポートをしていただきながら準備を進め、設立後は独自で運営をされています。
財間:文化財の修理を担当する設計士が事務局を努めています。地域内でも信頼されている方なので安心しています。保存会設立、そして運営の当初は米本さんにも大変お世話になりました。

米本:保存地区の「防災計画」を策定するにあたっては、保存会のみなさんに色々とご協力いただきましたね。会長さんにはアドバイザー会議のメンバーとして参加していただきました。
財間:専門家の方々のアドバイスをいただきながら、実効性のある計画ができたと思います。狭い谷間にあるまちの中で、伝統的な建物を守りつついかに安心・安全なまちづくりを目ざすか、という点での計画づくりは大変興味がありました。
米本:地区内は高齢化や少子化が進んでいますが、補助金をうまく活用して整備が行われ、空き家の活用なんかも進んできましたね。
財間:まち家を改修して宿泊施設にしたり、レストラン、特産品の販売などいろんなケースがでてきています。行政も長年の課題であった老朽化した施設を整備してくれました。非伝建物件である一般の住宅でも修景事業に協力してくれています。ただ、当時は同意したけれど社会情勢の変化などから、建物を解体したいという案件も出始めてきています。
米本:その後、独自で少額補助制度を創設されたり、民間の支援組織として一般社団法人なども設立され、支援体制も充実してきています。
財間:アドバイスをいただいて国の補助対象にはならない少額の補助制度をつくりました。また、保存会の事務局を支援し、防災計画を推進するための一般社団法人が設立され、これからの取り組みが期待されるところです。
米本:これから人口が減って行く中で、地域の宝である文化財を守っていくために大切なことはなんでしょうか。
財間:まずは、個々でしっかり仕事を維持しながら建物を維持していくことですね。そし適切に支援制度を活用していくこと。また、幸いにも甚大な被害を受けておらず、災害に対する意識が低いので、防災訓練などを実施して意識啓発を行い、いざというときに対応できるようにしておくことでしょうか。
米本:これからも応援していますので頑張っていきましょう。本日はありがとうございました。

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